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CASE STUDY

「ピオセラン」はポリスチレンとポリオレフィンの特性を高い次元で併せ持つユニークな発泡樹脂です。 開発以来半世紀、そのユニークな特長はお客様のニーズと積水化成品の技術力が相まって、従来では思いもつかなかった活躍フィールドへと拡がっています。

ここでは特に今「ピオセラン」が活躍しているフィールドについてご紹介していきます。

CASE: 自動車産業向け部材

低燃費、軽量化、安全性能、低環境負荷……。常にあらゆる性能に最高水準を求め続けられる現代のクルマは、テクノロジーイノベーションの最前線です。

「ピオセラン」は自動車産業分野において、車両の内部構成部材として国内主要メーカー8社全てに採用されています。

「ピオセラン」は2001年以来、
国内自動車メーカーでの採用を急速に拡大してきました。

そして、2006年以降には日本の主要自動車メーカー8社すべてで
「ピオセラン」が採用されています。

そして2010年以降
世界中のメーカーでも採用や導入検討が進んでいます。

バンパー芯材や下肢部衝撃吸収材などの衝突安全用途や、スペアタイヤスペーサーやフロアスペーサーなどの振動吸収用途、コンソールBOXやバッテリーインシュレーターなどの断熱用途など、今や使用箇所は様々です。ピオセランのどのような特性が活かされているのかご紹介していきます。

特集・開発ストーリー:見えない場所から、走りと安全を変える。自動車フロア設計における「ピオセラン」の進化と、最適解へのアプローチ
INTRODUCTION:1gを削るだけではない。複雑化するフロア下の「パズル」
ピオセランの複雑な成型品を囲んで仕様の確認や打ち合わせをする技術者と担当者たち

普段、ドライバーや乗員が目にすることのない自動車のフロアカーペットの下。そこは今、かつてないほど設計難易度が上がっている領域です。 ハイブリッド車の普及に加え、現在開発が進んでいる次世代BEV(電気自動車)では、床下一面にバッテリーを敷き詰めるレイアウトも検討されています。それに伴い、内装部品に許されるスペースは限界まで削られようとしています。 一昔前のように「とにかく1gでも軽く」と単純に詰め寄られる切迫感とは少し違います。今の現場で求められているのは、「より高度な安全基準や快適性を満たした上で、いかにこの限られたスペースにパズルを収めるか」という難題です。

「設計図面で指定された性能をクリアすることが大前提。その上で、どうやって薄くするか、どうやって軽くするか。そこが我々の腕の見せ所です。」

そう語るのは、長年ピオセラン部材の設計に携わってきた技術担当者。今回は、自動車のフロア下で進化を続けるピオセランの「3つの主要パーツ」と、開発現場で起きている最新の技術トレンドについて深掘りします。

PICK-UP 1【下肢部衝撃吸収材】硬すぎず、柔すぎず。「潰れ方」をデザインして足を守る
ピオセラン製「下肢部衝撃吸収材」

運転席の足元、フットレスト周辺に使われる「下肢部衝撃吸収材」。万が一の衝突時、ペダルを踏ん張ったドライバーの足(踵や脛)を守る重要な保安部品です。

「このパーツに求められるのは、単なる強度ではありません。硬すぎると衝撃が跳ね返って逆に足の骨を折ってしまう。逆に柔らかすぎると底付きして守りきれない。『いかに理想的に潰れて、エネルギーを吸収(E.A.)するか』が勝負なんです。」

ピオセランは、ポリスチレン(硬さ)とポリオレフィン(粘り)を複合させたハイブリッド素材。この「粘り」があるため、薄肉化してもバキッと割れることなく、ググッと粘りながら潰れることで衝撃を吸収します。

さらに実物の裏側を見ると、複雑なリブ(格子状の補強筋)が無数に入っていました。

「これは強度を出すためだけでなく、『あえてここを弱くして、ここから順に潰れるようにする』というコントロールをしているんです。過去知見を活用した形状最適化と実機テストを繰り返し、限られたスペースの中で最大の安全性を生み出す形状を導き出しています。」

PICK-UP 2【嵩上げ材】広大なフロアを支える、軽さと確かな踏み心地
ピオセラン製「嵩上げ材」

フロアカーペットの下に敷き詰められ、車内の床面をフラットにする大型パーツ「嵩上げ材(フロアスペーサー)」。単なる隙間埋めだと思われがちですが、ここには乗員の感性に響く技術が詰まっています。

「例えば、女性がピンヒールで乗り込んだ際、カーペットごと突き抜けてしまわないか。そういった一点集中の荷重にも耐えうる『しっかりした剛性』がピオセランにはあります。やわらかくフワフワした素材の頼りなさはなく、高級感のある『カチッとした踏み心地』を作れるのです。」

また、大型でありながら驚くほど軽い。この特長が車両の軽量化に貢献しています。

「車両床下の複雑な凹凸を埋め、広くフラットなフロアを形成するためには大型部品が不可欠です。ピオセラン成形品は優れた軽量性と形状自由度を活かし、大型化による重量増を抑えながら快適な室内空間づくりに貢献しています。」

さらにこの部材は、寸法精度が特に重要です。フロアの複雑な形状にピタリと合わせるために、成形後の収縮が少ないピオセランに優位性があります。EPPでは成形後の収縮を見越して大きめに作り、高温での養生工程が必要ですが、ピオセランはその工程を大幅に短縮または省略できます。

PICK-UP 3【シート芯材】「サブマリン現象」を防ぎ、ウレタンを超える機能性を
ピオセラン製「シート芯材」

リアシート(後部座席)の座面下に使われる「シート芯材」にも、ピオセランならではの採用理由がありました。それが「サブマリン現象」の防止です。

衝突時、乗員の体がシートベルトの下をすり抜けて前方へ滑り出してしまうこの現象。柔らかいウレタンだけの座面では体が沈み込みすぎてリスクが高まりますが、適度な硬度を持つピオセランを芯材として配置することで、過度な沈み込みを抑制し、乗員を正しい姿勢で保護します。

「また、ウレタンは経年劣化でヘタリやすいですが、ピオセランは形状安定性が高い。長く乗っても座り心地が変わらない耐久性も評価されています。ウレタンの使用量を減らせるため、軽量化とコストダウンにもつながる一石三鳥のパーツです。」

ウレタンとの一体成形にも対応しており、密着性を高めた仕様により接合強度を安定させることができます。ウレタンのみの構成では避けられなかったへたりの問題を解決しながら、素材使用量を減らして軽量化・コスト削減を同時に実現できる点が、採用拡大につながっています。

INSIGHT:なぜ、EPP(発泡ポリプロピレン)ではなくピオセランなのか?
自動車のワイヤーフレーム模型に組み込まれたピオセラン製部材の前で説明する技術者

軽量化素材としてはEPPも競合になりますが、現場がピオセランを選ぶ決定的な理由の一つに「寸法安定性」があります。

「EPPは成形後に収縮する性質があるため、金型から出した後に高温で『養生』させて寸法を戻す工程が必要です。一方、ピオセランは収縮が極めて少なく、金型通りの寸法がバシッと出ます。」

この特性は、複雑に入り組んだフロア形状にパーツをピタリと合わせるために不可欠です。さらに、一般的な発泡スチロール(EPS)の成形機(低圧蒸気)で製造できるため、高圧専用機が必要なEPPに比べて製造コストやエネルギー消費を抑えられる点も、脱炭素時代の大きなアドバンテージです。

また、EPPは成形後にクシュっと縮んだ状態で型から出てきて、数時間~数日の熟成工程(エージング)を経て元の寸法に戻るという特徴があります。ピオセランはこの後工程を大幅に短縮できるため、生産リードタイムとコストの両面で優位性があります。

BEYOND:「ピオセラン2.0」が突破した、倍率と安全性のトレードオフ
発泡素材特有の均一な粒子構造がわかる、ピオセラン成型品の拡大写真

そして今、これからのモビリティを見据えて注目されているのが次世代グレード「ピオセラン2.0」です。

従来、発泡素材には「倍率を上げて軽くしようとすると、燃えやすくなる(難燃性が落ちる)」という避けられない課題がありました。実際、従来のピオセランでは、自動車内装材料の燃焼性試験(FMVSS No.302)をクリアできるのは発泡倍率30倍程度まで。それ以上に軽くしようとして倍率を上げると、規格を満たすのが困難でした。

しかし、「ピオセラン2.0」はこの壁を突破しました。

従来品ではNGだった35倍、40倍、さらには45倍という高発泡領域で自動車難燃規格のFMVSS No.302をクリアできました。

さらに、配合比率の最適化などセキスイ独自の材料設計により、従来ピオセランを上回る剛性を実現しています。

「ピオセラン2.0」は、軽さと強さを高次元で両立。安全性や快適性を維持しながら、EPP比で約10~25%の軽量化を可能にします。

「現在開発が進んでいるような、バッテリーを床下全面に敷き詰めるタイプの次世代BEVにおいては、バッテリー重量の増加を相殺するための軽量化がより重要になります。また、エンジンの排熱を利用できないBEVでは暖房効率が課題となるため、ピオセランの高い断熱性が車室内の熱マネジメントに貢献する可能性も大いにあります。」

高倍率でも燃えにくい――。この特性は、安全基準と軽量化の両立に悩む設計者にとって、極めて大きな選択肢の広がりを意味します。

EPILOGUE:素材を売るのではなく、「設計」を売る
ピオセラン成型品の複雑な立体形状部分のクローズアップとピオセラン成形品の仕上がりをチェックする技術者

「お客様から『こんなアンダーカット形状、抜けない(成形できない)ですよね?』と相談された時が、我々の腕の見せ所です。金型の抜き方向を斜めに工夫したり、分割ラインを変えたりして、スライドを使わずに難形状を実現する。我々は単なる材料屋ではなく、設計のパートナーでありたいと思っています。」

見えない場所から、クルマの「走る・曲がる・止まる」を支え続けるピオセラン。その進化は、これからのモビリティの進化そのものでした。

注釈・用語解説

高耐衝撃性

発泡ポリプロピレンに対して同じ発泡倍率で比較した場合、1.1倍の耐衝撃性を発揮する「ピオセラン」は、クルマにおいて何よりも大事な衝突安全性能に寄与。

また振動吸収にも活かされています。

寸法安定性

複雑な形状かつ、ジャストフィットの成形精度

何万点という部品の集合体であるクルマにおいて、部品同士のクリアランス精度は重要です。

「ピオセラン」は成形時の寸法安定性に優れ、複雑なデザインにも対応できるため、所定の場所にピッタリ収まる部材を提供しています。

ピッタリ収まり衝撃も吸収するので、走行時のビビリ音・きしみ音などの低減にも一役買っています。

高耐薬品・耐油性

鉄、アルミ、ガラス、プラスチック、カーボンファイバー、レザー、ファブリック、ゴムとあらゆる素材を組み合わせて作り上げられるクルマにおいて、周辺部品同士の耐薬品・耐油性は超耐久商材としての性能維持のために重要な項目です。

「ピオセラン」の高い耐薬品・耐油性により周辺部品からの影響を受けず長期にわたり性能を維持できます。

軽量化

安全性能や走行性能、快適性の充実と低燃費化の両立は、車両重量の観点から見て相反する要件です。そのため現代のクルマ開発は1グラムの重量を削る事に腐心しています。

「ピオセラン」は従来のポリプロピレンを使用した成形品と同じ剛性の成形品を作る場合、使用する材料はポリプロピレンより少なくて済みます。つまり、より少ない材料で同じ要求性能の部材を作れるということであり、軽量化に寄与します。

高効率な供給態勢

「ピオセラン」は積水化成品独自のポリマーハイブリッド技術で生産されますが、汎用設備で成形・加工できることも特長です。

先の軽量化効果に加え積水化成品が世界中に展開する生産拠点の内、お客様に最も近い拠点からお届けすることにより高効率な供給態勢を構築。材料費と物流コスト、時間コストを低く抑えています。

CASE: 自動車部品輸送用梱包材

自動車の生産は、数万点におよぶ部品を組み立て工場へ届ける大規模な物流によって支えられています。重量部品からEV用バッテリーや電子制御ユニットなどの精密部品まで、さまざまな部品を安全かつ効率的に輸送することが不可欠です。

「ピオセラン」は、高い緩衝性能と耐久性を備えた発泡素材で、自動車部品輸送用の通い箱(リターナブル容器)や緩衝材として広く採用されています。薄肉でありながら高剛性を実現できるため、収納効率の向上による物流コスト削減と、繰り返し使用が可能なリターナブル性による省資源化に貢献します。

KD(ノックダウン)梱包においては、荷重分散や部品保持に優れた構造設計により、輸送中のズレや転倒を抑制します。多段積みや長距離輸送でも高い安定性を確保でき、部品損傷リスクの低減と物流効率の向上を実現します。部品の形状・重量・物流条件に応じた設計対応が可能で、KD梱包に最適な梱包仕様を個別に提案しています。

また、3R(Reduce・Reuse・Recycle)を体現するリサイクル原料を15%以上含有した「ピオセラン®RNW」をラインナップし、リターナブル資材への採用拡大を進めています。

ピオセランを使用した自動車部品輸送用梱包材の一例

「ピオセラン」を使用した成形品である「自動車部品輸送用梱包材」を積水化成品グループでは 「サステナブル・スタープロダクト」(環境貢献製品) ※として認定しています。

※ サステナブル・スタープロダクト:

積水化成品グループ(SKG)が掲げる「持続可能社会への貢献」を実現するためのアクションプラン 「SKG-5R」 の一環として策定された認定基準。 環境負荷低減や限りある資源に配慮した製品を「サステナブル・プロダクト」(環境対応製品)に、中でも特に環境への貢献度が高い製品を 「サステナブル・スタープロダクト」(環境貢献製品) に社内認定し、その創出と市場拡大を推進しています。

高耐衝撃性

重量のある金属部品やデリケートな電子部品の輸送においては、トラック輸送中の振動や荷役時の落下衝撃などにより、製品に損傷や機能不全が発生するリスクが常にあります。

発泡ポリプロピレンに対して同じ発泡倍率で比較した場合、1.1倍の耐衝撃性を発揮する「ピオセラン」は、優れたエネルギー吸収性により、外部からの衝撃や振動から内部の重要保安部品を強固に保護します。また、発泡素材特有の柔軟性が部品表面への擦れやキズを防ぎ、品質維持に貢献しています。

高剛性と寸法安定性

一度に大量の部品を運ぶ自動車物流において、コンテナの積載効率はコストに直結します。

「ピオセラン」の高剛性と寸法安定性を組み合わせることによって、従来の梱包材より薄肉化しつつ段積み(スタッキング)に耐えうる剛性を維持したデザインが可能となります。これにより1箱あたりの収納数が増え、輸送便数の削減や物流CO2の削減に寄与します。

また、自動化が進む生産ラインにおいては、ロボットによる部品の取り出し(ピッキング)精度が求められます。「ピオセラン」は寸法安定性が高く、長期間使用しても変形が少ないため、自動機との親和性が高いトレーとしても採用されています。

リターナブル性

優れた耐久性で「脱・使い捨て」を実現するピオセラン製通い箱

持続可能な社会の実現に向けて、物流資材の脱・使い捨て(ワンウェイ)は喫緊の課題です。ピオセランの特長は、耐久性とリターナブル性にあります。一般的な発泡素材は、繰り返しの衝撃や荷重によってへたりや割れが生じやすいですが、独自のポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂の複合技術により、優れた復元力と耐衝撃性を長期間維持します。

この高い耐久性により、ワンウェイ資材から、繰り返し使用する「通い箱(リターナブル容器)」への切り替えを可能にします。初期投資としての梱包費用は、使用回数が増えるほど1回あたりのコストとして大幅に低減され、長期的な物流コストの削減に直結します。

梱包設計

素材の提供にとどまらない、実運用を見据えたトータル梱包設計

梱包資材の性能は、使用する素材だけで決まるものではありません。部品条件・物流条件・作業条件を踏まえた設計検討によって、その価値は大きく左右されます。

ピオセランは、独自のポリマーハイブリッド技術により、剛性・寸法安定性・耐衝撃性を高次元で両立した素材です。この特性を最大限に引き出すため、当社では素材の提供にとどまらず、梱包設計まで含めた対応を行ってきました。 素材特性を熟知しているからこそ、用途や条件に応じて、性能・耐久性・作業性のバランスを考慮した梱包設計が可能です。自動車部品分野を中心に培ってきた設計検討の経験をもとに、実際の運用を見据えた梱包提案につなげています。

「この条件では、どのような梱包が考えられるのか」まずはその設計検討から、お気軽にご相談ください。

高効率な供給態勢

「ピオセラン」は積水化成品独自のポリマーハイブリッド技術で生産されますが、汎用設備で成形・加工できることも特長です。

先の軽量化効果に加え積水化成品が世界中に展開する生産拠点の内、お客様に最も近い拠点からお届けすることにより高効率な供給態勢を構築。材料費と物流コスト、時間コストを低く抑えています。

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